サクラマスの駅伝

写真:日野川でサクラマスをゲットサクラマスは、基本的に日本海側の寒いところに生息し、上流から海へとくだり、そして産卵のために帰ってくる魚です。
わたしたち日野川流域交流会は、“サクラマス”を活動の象徴として、そのサクラマスが帰ってこれるような環境づくりを駅伝のように広げていこうという願いを込めて、平成12年に発足しました。主な活動としては、“川と人とのいい関係”を築いていくこと目指し、住民、団体、行政、専門家、そして企業がともに連携交流する年に一度のコアフォーラムや各川の駅の皆さんとの企画・協賛イベントなどを行っています。

サクラマスという魚は?

sakuramasu 日野川流域交流会が捕まえたサクラマス
サクラマスとヤマメ
ヤマメは産卵地付近にいる魚をいい、海に一旦行って上がって来た魚をサクラマスといいます。つまりヤマメとサクラマスは同じものです。 サケは、ベーリング海峡あたりまで回遊しますが、サクラマスはオホーツク海あたりで成長して自分が生まれた川へ戻ってきます。

写真
(写真:北陸地方のヤマメ)

 

上の写真は、北陸地方のヤマメです。これらの個体にはおなかに黒い斑文があります。斑文の大きさや数なども違ってきます。川によって少しずつ個体変異があります。メダカでもあちこち移動してはいけないといわれるのは、川によって形が違うからです。メダカでも日本全国で5つの遺伝子があるといわれています。サクラマスは基本的に寒いところに生息しています。昔から自然的に分布しているのは日本海側の島根県から福岡県あたりまで、太平洋側では神奈川県から北がヤマメの生息域であり遡上域であったわけですが、最近、いろいろな放流がありアマゴでも各河川で放流しています。アマゴは技術が進歩したおかげで比較的養殖しやすくなり放流量も増えています。ところがヤマメの方は養殖が難しく、放流量も増えていません。ですが、ヤマメ・アマゴ両方とも放流しています。ヤマメとアマゴの人工交雑魚には、赤い点があったり痕跡があったりします。つまり、世代によって違いますが赤い点が出る場合とでない場合があるわけです。2000年8月、日野川流域交流会で開催したサクラマス調査会にて、サクラマスとサツキマスを捕獲しましたが、こっちがサツキマス、こっちがサクラマスと簡単には言えませんでした。結局鱗を調べて成長の度合いを見て判別できました。つまり同じ川でも混在しているというのが最近の例です。
ぱっと見だけではわかりにくいのですが、一般的には、体長30cmを境として、小さくて赤い点があったらアマゴ、赤い点がなければヤマメ。30cm以上で赤い点があったらサツキマス、なければサクラマス。

福井県の場合、遡上してくるサクラマスというのはほとんどがメスです。産卵が秋口ですけれども、秋口から春先に卵から孵って、1年間その川で泳いでいるわけです。それから大きくなるわけですが、餌の関係で大きくなったものとそのままのものがいます。大きくなったものは鱗が銀色に変りまして、海へ下がっていくわけです(スモルト化)。つまり淡水と海水の準備期間です。

サクラマスは、福井県では桜の咲く頃に遡上してきます。九頭竜川では4月~5月が漁期になります。その間、遡上してくるわけですが、遡上する場合、最上流域まであがってきます。それから5~6ヶ月川の中にいるわけですが、普通は、餌を食べながら渕などの深みの中で休んでいます、そして増水したときに一気に登ります。小さな堰ですと3mぐらいなら乗り越えられます。魚道の改修などでサケだけを対象にするのなら3mまでの堰にすればいいわけです。ただし、水の量が豊富でないといけません。水かさは1m以上でないと無理です。ただ魚道はサクラマスだけではなく、アユなどの他の魚にも配慮しなければいけません。

産卵について
卵は紅葉の時、大体一匹200~400個を産卵します。サクラマスは最上流域までいきます。つまり谷川の水が流れて、砂利の中に冷たい水が染み込む辺りに産卵します。産卵場所、産卵時期、産卵行動ですが、サケ科の魚ですから、他のサケ科と同じような行動をとります。ビデオなどで北海道のサケの産卵シーンを見たことがあるかと思いますが、基本的にはサクラマスも同じです。平らなところに尾ビレで穴を掘って窪みを作り産卵する場所を作ります。その窪みを作る際、水の流れで掘った土砂が選別されて泥などの細かい砂は下流の方へ流されてしまいます。すると結構荒い石だけが残ります。その窪みができたところへメス(サクラマス)がきまして卵を産み落とします。すると、もともと川に残っていたヤマメが子孫を残すため、卵を産み落とした瞬間にどっと押しかけて精子をかけます。産卵したメスはさらに荒い石をかぶせ、水が卵のところへ染み込むようにします。すると酸素不足になりません。ですから、渕から瀬にあがるところに産卵場所をつくるわけです。泥がたまると産卵ふ化率が非常に悪くなります。水の流れが常にあるところへ自分で穴を掘って卵を伏せているのです。覆わないと流れてしまったり、食べられてしまいます。

サクラマスの産卵後の生活
紅葉前線の頃に卵が産まれて12月中旬にふ化し、春先3~4ヶ月かけておなかに付けた卵黄で栄養にして石の中にいます。春になってから浮上し稚魚になります。稚魚になってから北海道~日本海側の資料では、4月の頃は渕、岸辺のちょっとした深みのところにいます。それから餌を取って、5~9月頃まで川の中に居り大きくなってきます。大体1年、10月頃になると体長18~19cm、成長の早いものは25、26cm頃級にまで成長します。放流するものは、春に小さい稚魚の状態で放流するものと、秋に大きくなってから放流するものとあります。

普通はこういうふうに生活しており、中には秋、11月頃には深いよどみの中に入り休んでおり、3月までの間に大水の時に海へ下るわけです。その海へ下るときに、山間渓流から塩分濃度の高い海に適応させるために体の構造を変えます(銀毛化)、その為に 表から見ると銀色になるわけです。そして海へ下ってから1年間ぐらい豊富な餌を食べながら体長が大きくなります。そして上流に上ってくるというサイクルです。

問題は海へ行った魚が帰れないという現状があります。どこの川でも堰や落差工があります。豊富な水量があれば小さな堰があってもいいのですが、上流にダムをつくり農業用水や工業用水のために水量の管理をしますので、普段の水量が非常に少なくなります。生態系を考えるとダムや堰きは非常に不都合が生じます。また、コンクリート三面張りの用水などがあると生き物が陸に上がれないために、生き物がだんだん減ってきています。

サクラマスの生育過程
11月下旬 12月上旬 翌年1月
写真1 写真2 写真3
1.サクラマスからの卵(左)とヤマメからの卵(右)色などが異なります。 2.発眼卵(目が見えるようになった卵)とふ化仔魚 3.浮上間近の仔魚。卵黄の吸収がほぼ終わり幼魚紋が出てくる。
2月下旬 3~6月頃 7月上旬
写真4 写真5 写真6
4.浮上して摂餌を始めた頃の稚魚。2月下旬 5.サクラマス稚魚(上)とサケ稚魚(下)。5月になると体高が高くなります。 6.体高が高い時期の未成魚。7月上旬