講座「サクラマスの遡上」 2005年5月10日(火)武生商工会館にて開催
講師 長谷川 巌 先生

 武生市希少野生生物保護専門委員
 日野川流域交流会代表幹事

 環境省希少野生動植物種保存推進委員
 財団法人環境再生医(自然環境部門)
 福井県両性爬虫類研究会代表

 「サクラマスの駅伝」プロジェクト
 2000年12月にスタートしたこのプロジェクトは、日野川流域の活動団体、行政、企業、住民などの交流連携により、激変してしまった川の環境を改善し、サクラマスが遡上できる環境を駅伝のように繋げていこうというものです。そして、日野川流域交流会はそれらの交流連携をする場です。これまでに、フォーラムの開催、川の駅交流、全国大会誘致開催、子どもの水辺活動等を実践し、魚道の改修工事も実施されました。
 サクラマスとは?
 サクラマスは上流にいるヤマメが海に下り回遊した後、産卵のため再び上流へ遡上する魚です。大きさは50〜70cm、
体重は2kg〜3kgです。
その生活史は、11月:本流や支流の源流域に産卵→1月〜3月:川を下る→7月:海に入る(川で一生を過ごす魚もいる)→北日本沿岸からベーリング海を回遊→1年から5年後の12月〜1月:沿岸へ→1月〜2月:河口にしばらくとどまり真水に体を慣らす→未熟の状態で遡上→4月〜5月:川の生活で成熟→11月:産卵 となっています。


日野川流域で捕獲されたサクラマス


 サクラマスの生息条件

移動ルート 堰やダムなどで移動を阻害されていないこと
産卵場所 河川水の浸透する砂礫底の淵から瀬に移るところ
水温 18度以上に上昇しないこと
水質 孵化には溶存酸素が十分あることが必要。水の落ち込みなどの地形により曝気がなされていることが重要である。
餌となる水生昆虫が生息できる環境を維持することが必要。
休息・採餌 上流のs型の淵、河岸が深くえぐられたところ、河畔林や水生植物の根茎が水中に露出したところなどが休息や避難の場所となる。
また、水面に樹木の枝が張りだして影を落としているところは、避難場所であるほか、餌となる昆虫類の供給地ともなる。
周辺植生 河岸の植生が人工林になると保水能力の低下から水量の減少や土砂の流入へとつながることがあるので、集水域全体をその水源滋養機能も含めて保全しなければならない。

 講義のまとめ
 日野川はかつて大雨ごとに氾濫していましたが、上流から下流域にかけて農業や治水などの目的で数多くの河川改修が行われ、松ヶ鼻頭首工をはじめとする多くの堰ができました。昔はたくさんのマスが日野川を遡上していましたが、現在ではこのような堰が障害となって、生まれた川へ帰る回帰率はわずか0.2%です。
 日野川流域交流会では「サクラマスの駅伝」の中で、堰や魚道の見直しを行い、サクラマスをはじめとする魚たちが遡上しやすく、かつ生物多様性が維持できる環境づくりについて取り組んでいこうと考えています。
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